急成長のためのリーダーシップとは?元アクセンチュア日本代表 森 正勝さんに聞く ~社長コラム 第2回~

コラム2回目です。当コラムでは、お会いした人との会話の中で、僕自身が感じたことや勉強になったことも書いていこうと思っています。今回は、元アクセンチュア日本代表の森 正勝(もり まさかつ)さんに久々にお会いし、いろいろなお話を伺ったので、そのことを書かせていただきます。
私の社会人人生は、当時のアンダーセンコンサルティング、現アクセンチュアからスタートしました。その頃のアンダーセンは急成長期間で、その急成長をリードしたのが森さんです。森さんが今のアクセンチュアを作り上げたと言っても過言ではないと思います。

◆Vision(ビジョン)の必要性とアプローチの重要性

当時の東京オフィスは300名足らずでした。今のバーチャレクス・コンサルティングとそんなに変わりません。その時、森さんは「2000Vision」というのを発表しました。2000年に2000人にするというものです。
森さん: 【丸山君、Visionが無いと目標地点には行きつけないんだよ。一部で何言ってんだって言われるかもしれないけど、そうやって人を引っ張っていく必要があるんだよ。】
もり まさかつさん
Visionの必要性は、いろんな本に書かれているとおりですが、Visionを示しただけで、それが実現できるわけではありません。森さんはVisionとともに、そのVisionに到達するまでのアプローチも同時に考え、実行していました。
森さん: 【採用方針も"Best People"って言ってたでしょう。No.1の人材を確保するところから始まり、入社したらMethodology(メソドロジー/方法論)と教育だよ。そうやって優秀な人を早く成長させるモデルを構築しないと実現できないことだからね。】
300名の会社が新卒を100名採用するというようなことがなされていましたが、Best People→早期育成という流れがしっかりと構築できていなければ、破綻していただろうと思います。実際、当時Methodologyがあったおかげで、プロジェクトメンバーとして集まっても、何をすれば良いのかがわかりやすかったという実感があります。「Methodのあの工程の、このタスクをやればいいんですね」という具合でした。また、教育投資も売上の10%近くあったということで、Visionの大きさもさることながら、Visionの実現に向けたアプローチも大胆であり、半端ではなかったということです。
Visionがある山の到達地点であるとするならば、アプローチはそこに到達するための道筋ということでしょう。Visionは必要(=目標は無くてはならないもの)ではありますが、その目標が高ければ高いほど、アプローチ(道筋)はより重要です。本気でアプローチを考え実行しなければVisionは実現できません。
当時その中にいた自分がその会社を経営していた方に話を伺い、当たり前と言えばそれまでですが、僕にとってはすごくリアルな事例として勉強になりました。大胆でかつ理にかなったアプローチが特に重要だと痛感しました。

◆日本の課題は世界に通用する人材を育てること

森さんは、国際大学の副理事長(元学長)でもあります。日本の企業がなかなかグローバル企業になれないのは、グローバルに通用する人材の育成が間に合っていないからだというお話も伺いました。
森さん: 【プロとしての何かのSkill(スキル)を持っていないとね。】 【英語力じゃないよ。コミュニケーション能力だよ、重要なのは。】
森 正勝さんとの対談の模様
日本の会社が様々な外国企業を買収したりしていますが、買収した会社をきちんとマネジできるかどうかが重要だとおっしゃっていました。ビジネスとして買収の効果を出さなければならないわけですから、その会社を経営しなければなりません。経営するということは、資本の論理で単にポジションだけ押えればできるということではありません。M&Aの話でなくとも、グローバルリーダーは、プロとしての何らかのSkillを持っていることが必須で、なおかつ日本人以外とのコミュニケーション能力も必要だと伺いました。英語が話せるということではないという話も印象的でした。グローバルなコミュニケーション能力とは、異文化と付き合える能力であり、その人の持っている人間力そのものも含まれていて、英語で話しているかどうかではなく、やはり「何を話し、何を聞くか?」という人としての根本的な能力が重要だと感じました。その能力を海外の人に対して発揮できるかどうかということですね。

◆企業カルチャーとワークスタイル

企業カルチャーやワークスタイルについてもお話を伺いました。当時から、"Think straight.Talk straight.(単純に真っ直ぐ考え、率直に言う)"などのキーワードが社内で共有されていて、その単語のおかげで先輩や同僚、あるいは後輩などとも、遠回しな言い方ではなく、まさにストレートに議論することができました。それは自分自身にとっても大変重要な経験で、今も大切にしているキーワードです。ほかにも、"Respect Individual(個の尊重)"というのもありました。バーチャレクス・コンサルティングにも行動規範がありますが、それらには、当時僕自身が良かったなと思ったこれらのキーワードのエッセンスが入っています。
森さん: 【コミュニケーションは何よりも重要だよ。繰り返し伝え続けることは大事だよね。】
当時Eメールはありませんでしたが、日本では珍しく、ボイスメールのシステムが使われていました。特別な電話番号に電話してからプッシュボタンで自分のボイスメールボックスをチェックしていましたが、実際それに森さんから社長メッセージが届いていました。ご本人の声で入っていたので、もしかしたら、Eメールよりもメッセージ効果も高かったのかもしれません。バーチャレクス・コンサルティングのDNA(行動規範)なども、もっともっと社内で共有できるように、僕自身、繰り返し発信しなければならないと反省しました。
それから僕自身やバーチャレクス・コンサルティングのリーダークラスにもアドバイスを頂きました。
森さん: 【 当時、Work hard, Enjoy life(ハードに働き、生活を楽しもう)とかって言ってたでしょう。でも、黙っていると皆Work hardしかやらないんだよ。丸山君もそうだけど、会社のリーダーは、会社の外でいろんな人と会い、更にそういう人とのネットワークを常にメンテナンスしていかなきゃいけないよ。丸山君も〇〇会ぐらい入ったらどう?】
会社が強くなるためには、社内にばかりいてはだめだと言う話もありました。外のネットワークとは、異業種交流会のような名刺交換の場のことではありません。きちっと人としての信頼関係があって、それぞれが、どんなビジネスを、どんな志でやっているかも共有した関係性のことだと思います。そういうネットワークからは、お互いのためになる情報や経験も共有できますし、いざと言う時には声をかけあえる(仕事も依頼できる)関係でもある、というように思います。
森 正勝さん×丸山 栄樹

◆終わりに

当時からOBやOGを大事にする会社でしたが、当時のただの社員だった僕のために、森さんがお時間を割いてくれたことに非常に感謝しております。勝手に退職した元社員が、今頃になって自分勝手にお話を伺いたいと図々しく連絡をして、それに"いいよ!"って言ってくださる人ってそんなにいないと思います。 森さんは、丁寧に、またシンプルに、深い話をしてくださいました。僕の文章力ではそれを十分にお伝えできませんが、僕には深く伝わりました。森さん、ありがとうございました。